AMeeT exhibit guide 本館・印刷歴史館
展示品のご案内

設立趣意

京都の近代化と印刷が果たした役割

明治期におけるわが国の文明開化と産業発展の幕開けは、情報伝達手段としての印刷技術に依存することが大きく、その意味において印刷は文化文明の原点といえます。

木版手彫りから金属活字への移行により近代的な印刷物の製作が京都で始まったのは、1877(明治10)年2月発刊の日刊新聞「西京新聞」であると言われています。また、1912(明治45)年の明治天皇大葬の状況を日本で初めて写真による号外で伝えたことは、挿絵を木版画から写真印刷に置き換えるきっかけになりました。さらに京都日出新聞社における工芸品や絵画の多色刷り写真印刷方式は、京都を全国の写真印刷技術の最高峰としての地位に引き上げました。

このように、単に産業発展の担い手としてだけではなく、文化・芸術・学問などとの接点を持ち、それらの発展を下支えしてきたのが印刷産業であるといえます。このことは、例えば、今日でもわが国の絵画や書画の中心が京都にあり、一方では産業界において美術印刷や写真印刷・表装・修復技術などの中心もまた京都にあることを見ても、歴史に残る文化遺産と、それらを普及・維持・継承させる技術としての印刷は、互いに密接に関係しているように思われます。

印刷技術の革新とIT(情報技術)

1990年代以降における印刷技術の急速な進歩と高度化は顕著であり、特にエレクトロニクス化とデジタル化が印刷産業の方向性を決定づけています。これはコンピュータに蓄積された印刷情報(コンテンツ)がデジタル的に処理・加工され、紙面への印刷出力のみならず多様な記録メディアへと書き込みが可能となっています。さらに、インターネットをはじめとする高速通信ネットワークの発達に伴い、情報データが瞬時に送信され、あるいは閲覧できることが日常的になっており、こうした技術革新がもたらす印刷産業への影響は、従来からの事業の枠組みを変質させるものとして、クローズアップされています。特に、京都が保有する歴史的な遺産の情報をデジタルデータで保存・蓄積する技術の研究と実践は、世界的にも注目を集めていることから、かかる分野への支援は重要と思われます。

私たちの使命として

この機に至り、近代以降の歴史の中で、京都の地において保存・蓄積されてきた印刷に関する過去の設備・材料・技法を伝えるさまざまな文物・記録類は、未来の文明・科学のあり方を洞察するうえでの生きた証拠品であるといえます。これらは決して簡単に朽ち果て消滅させられるようなものではなく、永久的かつ体系的に保存し展示されて後世に役立てることが、今日まで京都で生かされてきた一市民としての企業や個人の社会的責任であり、使命であると自覚しています。

急速に変化する時代にあってこそ、印刷技術の発展過程を観察することにより、人間社会と印刷の関わり合いを考える場となり、またそこから新しい知恵と創意工夫が京都で芽生え、ベンチャー精神の昂揚、さらにはベンチャー起業を促すことにもなりうると確信します。あるいは、京都の未来の発展を担う子どもたちへの印刷技術を通じての教育面での助成や支援もまた、地域経済の長期的な発展のためには不可欠であると思われ、それへの有形・無形の取り組みが重要であると考えられます。

かかる事業は、一企業、一個人では円滑に遂行するのは困難であると思われ、国法による保護と主務官庁の監督のもとに事業を遂行すべきであり、ここに財団法人組織の必要性を痛感するものです。

ついては、わが国における伝統と先端技術の中心である京都において「一般財団法人ニッシャ印刷文化振興財団」を設立し、印刷文化・技術関係の資料の収集・保存および公開、印刷文化・技術に関する研究会・講演の開催、あるいは関連する調査・研究に対する助成・支援などを通じて、印刷文化・技術の継承と振興を図り、これをもって京都における印刷文化・技術の向上発展、ひいては京都における産業・経済の発展に寄与していく所存です。

一般財団法人
ニッシャ印刷文化振興財団